IRRとは?内部収益率の考え方やNPVとの違いを学び不動産投資に活かそう

投資物件の収益性を評価する指標として「IRR」があります。不動産投資をする物件を選ぶ際は、利回りだけでなくIRRを確認することが重要です。

ただし、IRRのみで投資すべきかどうかを判断できるわけではありません。IRRで収益性を確認しつつも、他の指標も用いて投資対象を選ぶことが大切です。

本記事では、IRRの計算方法やメリット、デメリットを解説します。不動産投資についても基本的な知識を身につけたいという方はこちらの記事がおすすめです。
>> 不動産投資の第一歩 仕組み・種類・メリット・注意点を徹底解説【リンク】

 

 

IRRとは

 

IRR(Internal Rate of Return、内部収益率)は、「投資する金額(初期投資額)」と「投資をすることで得られるキャッシュフローの現在価値の合計」が等しくなるときの割引率を指します。※キャッシュフローとは、 家賃収入などから支出を差し引いて手元に残る額

投資対象にどれほどの収益性があるのかを判断する指標は「利回り」が代表的です。
利回りは、基本的に「年間で得られる収益 ÷ 初期投資額(投資元本)」で計算をします。

例えば、初期投資額が100万円、毎年の利益が2万円である商品に投資するとしましょう。
毎年の利回りは「20,000円÷1,000,000円=2%」です。5年間にわたって毎年2%の利益を得られると、利回りは合計で2%×5年=10%となります。

しかし、投資をするときに「この投資対象は5年間で合計10%の利回りが期待できる」と考えるのは早計です。というのも、お金は運用により増やすことができるため、現在の価値がもっとも高く時間の経過とともに基本的には下がっていくためです。
そのため、投資後に得られる収益を予測するときは、現在の価値に計算し直して評価することが重要となります。

IRRであれば、時間の経過による価値の変化も考慮した投資対象の収益性を把握できます。
まずは、IRRの計算方法や計算に必要な割引率についてみていきましょう。

 

IRRの計算に必要な「割引率」とは

割引率は、将来的に得られるお金の現在価値を算出する際に用います。

例えば、100万円を年利3%で運用し、1年後には103万円に増えているとしましょう。1年後の103万円を現在価値である100万円に直すときは、年利3%で割り戻します。
この割り戻すときに用いた「3%」が、割引率となります。

 

IRRの計算方法

IRRを計算するときは、割引率を用いて将来的に得られるキャッシュフローを現在の価値に直す必要があります。
n年後のキャッシュフローを現在価値に直すときの計算式は、以下の通りです。

 

続いて、IRRの計算方法をみていきましょう。

 

C(0)の初期投資額は、投資を始めるときに出ていくお金であるため、必ずマイナスの値となります。初期投資額(マイナス値)に、各年のキャッシュフローの現在価値の合計を足し合わせた結果が0になるときの割引率(r)がIRRです。
IRRの数値が高いほど、投資金額を短期間で回収できる収益性の高い投資案件であると判断できます。

 

IRRはExcel(エクセル)で簡単に計算できる

IRRの計算式は複雑であり、投資期間が長ければ長いほど手計算は困難になります。
そこで活用したいのが、表計算ソフトのExcel(エクセル)です。
Excelでは、IRRを計算できる関数があります。計算手順は、以下の通りです。

  1. シート内の任意のセルに初期投資額や毎年のキャッシュフローを入力する
  2. IRRの計算結果を表示させたいセルを選択してIRR関数を挿入する
  3. IRR関数の「範囲」に、初期投資額や毎年のキャッシュフローを入力したセルを指定する
  4. 計算結果が表示される

 

入力例は、以下の通りです。

 

セルB2には、マイナス値の初期投資額を、セルB3〜B7には毎年のキャッシュフローを入力します。
次に、セルB9に「=IRR(範囲、[推定値])」と入力してIRR関数を挿入し、計算に利用するセルの範囲について「B2:B7」を指定します。

範囲を指定する際は、該当のセルをマウスなどでドラッグするか「B2:B7」と入力すると良いでしょう。推定値は空欄で問題ありません。

計算の結果、IRRは約6.96%となりました。

 

 

IRRをシミュレーションしてみよう

ここで、モデルケースを設定にIRRをシミュレーションします。
初期投資額が500万円、投資期間が5年である、投資案件Aと投資案件Bがあるとしましょう。案件Aと案件Bは、毎年のキャッシュフローが以下の通り異なります。

 

案件A案件B
1年目300,000150,000
2年目250,000300,000
3年目400,000500,000
4年目420,000600,000
5年目5,400,0005,800,000
合計6,770,000円7,350,000円

 

案件Aと案件BのIRRを計算すると、それぞれ以下の通りとなります。

 

シミュレーションの結果、IRRは案件Aが6.98%、案件Bが8.86%となりました。
そのため、案件Bの方が収益性は高いと判断できます。

 

IRRのデメリット

 

IRRの主なデメリットは、次の通りです。

  • 投資対象の規模が考慮されない
  • 計算結果がマイナスになることがある
  • 投資期間が長期にわたると結果が低く算出されやすい

 

IRRでは投資対象の収益率の高さを評価できますが、投資規模が考慮されません。

例えば「100万円が1年後に150万円となる投資案件A」と「1,000万円が1年後に1,200万円となる投資案件B」があるとしましょう。IRRを計算すると、案件Aは50%、案件Bは20%となります。一方で収益額は、案件Aが50万円であるのに対し案件Bが200万円と高額です。
そのため、より多くの収益を得たいのであれば、IRRが低い不動産Bを選んだ方が良いといえるでしょう。

キャッシュフローの合計がマイナスになるケースや、初期投資額がキャッシュフローの現在価値の合計を上回る場合、IRRの計算結果がマイナスとなります。短期間で利益が多く発生する投資対象ほど、IRRは高く算出されます。
そのため、長期間な視点で投資をする場合、IRRが低く算出されてしまい、投資判断をする際の有効な指標とならないことがあります。

 

IRRのメリット

IRRの主なメリットは、以下の通りです。

  • 投資期間も考慮して投資物件の収益性を評価できる
  • 毎年のキャッシュフローが異なっていても計算が可能
  • 異なる投資対象を比較できる

 

回収できる金額が同じ投資でも、利益を得られる期間が短いほどIRRは高くなります。
そのため、IRRを用いて投資対象の収益性を評価することで、投資金額をいかに効率的に回収できるかが判断しやすくなります。

IRRは、毎年のキャッシュフローが異なる場合でも計算が可能です。投資によっては、毎年のキャッシュフローが一定ではないことがあります。
例えば、不動産投資では空室による家賃収入の減少や建物の修繕費の発生などがあるため、毎年のキャッシュフローが基本的に一定ではありません。

キャッシュフローが変動しやすい投資対象でも、IRRであれば計算できるため、不動産投資と相性が良い指標といえます。
IRRの計算に必要な要素は「初期投資額」と「毎年のキャッシュフロー」のみです。定期預金や投資信託、不動産など、さまざまな投資対象の収益性を比較できる点もIRRの主なメリットといえます。

 

 

NPVとの違い

不動産投資の収益性を測る指標には他にも「NPV(Net Present Value)」があります。NPVは、正味現在価値のことであり、計算式は以下の通りです。

  • NPV=毎年得られるキャッシュフローの現在価値の総和−初期投資額

 

毎年得られるキャッシュフローの現在価値の総和を求める点は、IRRと同様です。
一方で、IRRは「初期投資額」と「投資によって得られる収益の現在価値」の差額が0になる割引率を求めるのに対し、NPVは両者の差額を求める点が異なります。

例えば、毎年得られるキャッシュフローの現在価値の総和が400万円、初期投資額が300万円である場合、NPVは「400万円−300万円=100万円」です。

NPVの計算結果がプラスであれば、投資をしても良いと判断されます。なお、NPVの計算課が0になるときの割引率がIRRとなります。

 

NPVのデメリット

NPVの主なデメリットは、以下の通りです。

  • 割引率を自分自身で設定する必要がある
  • 投資期間が長期にわたると結果が低く算出されやすい

 

NPVを計算するときは、自分自身で割引率を設定します。割引率によって将来的なキャッシュフローの現在価値が大きく異なるため、適切に設定しないと投資判断を誤ってしまうかもしれません。

そのため、NPVを計算するときは、リスクやリターンなどを考慮して割引率の値を適切に設定することが重要です。投資期間が長期にわたると結果が低く算出されやすい点は、IRRと同様のデメリットといえます。

投資によっては、短期的にはあまり収益が期待できないものの、将来的に大きな収益が見込めることがあります。しかし、投資から年数が経過するほど割引率が高くなるため、長期的な投資案件はNPVでも評価しにくいのです。

 

NPVのメリット

NPVの主なメリットは、以下の通りです。

  • 投資規模を考慮できる
  • 投資状況に応じた割引率を設定できる

 

IRRは投資規模が考慮されないため、収益額が高いにもかかわらず低く算出されることがあります。
一方で、NPVは将来的に得られるキャッシュフローの合計額から投資額を差し引くため、いくらの利益が見込めるのかを把握しやすいです。

自分自身で割引率を設定できることは、NPVのメリットであると考えることもできます。
投資対象から期待できるリターンやリスクなどをもとに、割引率を調整することで、投資対象と有効であるかどうかが判断しやすくなるためです。

 

 

不動産投資におけるIRRの考え方

 

不動産投資においてIRRは、表面利回りや実質利回りと同様に投資判断をする上で重要な指標となります。

表面利回りは「年間収入÷物件価格×100」で計算するシンプルな利回りであるため、仲介手数料や修繕費などの経費が考慮されません。
実質利回りは「(年間収入-年間経費)÷物件価格×100」で計算するため、経費も踏まえた物件の収益性を確認できます。
しかし、物件の出口戦略も踏まえた収益性や家賃の減少などは考慮されません。

IRRであれば、お金の時間的な価値の変動を踏まえて、出口戦略までの収益性を把握することができます。
また、限られた資金で投資先の不動産を選ぶときに役立ちます。IRRを計算することで、少ない資金でより多くの収益が見込める投資物件を選びやすくなるでしょう。
一方で、IRRでは投資規模を考慮できないため「一棟アパートと戸建住宅」「一棟マンションと区分マンション」のように、規模が異なる物件の比較には向いていません。

IRRは投資先の不動産を選ぶ際の指標の1つに過ぎないため、NPVや利回りなど他の指標も参考にすることが大切です。不動産投資の利回りに関しては、こちらの記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
>> 不動産投資の利回りランキング 利回り相場や物件選びのポイントを解説【リンク】

 

エクイティIRRとプロジェクトIRR

IRRには、自己資金のみを初期費用とする「エクイティIRR」と、借入金と自己資金の合計を初期費用とする「プロジェクトIRR」の2種類があります。不動産投資では、エクイティIRRを用いるのが一般的です。

投資用の不動産を購入する場合、多額の資金が必要となるため、金融機関からの融資を利用するケースは少なくありません。融資を受けられると、エクイティIRRは上昇し、少ない自己資金で高い収益を得やすくなる「レバレッジ効果」が働きます。

ただし、金融機関からの融資額が高いほど良いわけではありません。融資額が高くなると返済額が増えて、空室や家賃滞納が発生したときにキャッシュフローが悪化しやすくなるためです。
金融機関から融資を受ける場合は、返済計画を立てキャッシュフローをシミュレーションし、慎重に借入額を決めることが重要です。

 

戸建投資におけるIRRの考え方

中古の戸建住宅は、初期投資額が少ないです。地方にある物件であれば修繕・リフォーム費用を考慮しても数百万円程度で済む場合があります。

賃貸需要が見込めるエリアの物件を購入し、魅力的な物件に改装することで高い収益性が期待できます。投資効率が良い中古戸建に投資して、投資金額を早期に回収したいのであれば、IRRの高さを比較して投資先を選ぶのも1つの方法です。

新築戸建は、中古戸建よりも初期投資額が高いため、IRRが低く算出されやすいです。
投資期間が長期にわたる場合は、IRRはさらに低くなるでしょう。
一方で、日本では新築住宅の人気が高いため、安定した賃貸需要が見込めるエリアの新築戸建に投資できれば、長期的にキャッシュフローを得られます。

そのため、新築戸建に投資をする場合は、あえてIRRを参考にせず他の指標を優先して投資判断をした方が良いこともあります。戸建投資に関してはこちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
>> 【初心者向け】戸建投資は危険?メリットデメリットを徹底解説【リンク】

 

 

まとめ

IRRとは、投資額から現在の価値に直した毎年のキャッシュフローを差し引いた値が0円となる割引率のことです。IRRを計算することで、投資した金額が効率良く回収できるかが判断しやすくなります。

また、毎年のキャッシュフローが異なる投資対象でも算出が可能です。
家賃収入や修繕費などが変動しやすく、毎年のキャッシュフローが一定ではない不動産投資にとって、IRRは投資先を選ぶ際の重要な指標であるといえるでしょう。

ただし、IRRには「投資規模を考慮できない」「収益がマイナスであると算出できない」などのデメリットもあります。不動産投資をする際は、IRRだけでなくNPVをはじめとした他の指標も用いて投資判断をすることが大切です。

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